スマート漁業 (Smart Fishery)

カテゴリ: 未来概念 (Future Concepts)
スマート漁業 (Smart Fishery)

スマート漁業(Smart Fishery)とは、従来の「勘と経験」に頼っていた漁業に、ICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボット技術などを導入し、データを武器にする新しい漁業のスタイルです。高齢化と後継者不足が進む日本の水産業において、労働負担を減らし(省力化)、確実に利益が出る(高収益化)産業へと転換させる切り札として期待されています。

最新動向 (2024-2025年)

「獲る」だけでなく「届ける」までの一貫したデジタル化が進んでいます。

  • 水産庁の推進政策: 日本政府は、操業日誌のデジタル化や、漁港での水揚げデータの自動化を強力に推進しています。これにより、資源評価の精度が飛躍的に向上しました。
  • スタートアップの台頭: ウミトロン(Umitron)などのスタートアップ企業が、衛星データとIoTセンサーを組み合わせた養殖支援サービスを世界展開し、餌代の削減や魚の生存率向上で成果を上げています。

AIとデータサイエンスの活用

漁師の「暗黙知」をAIが「形式知」に変えつつあります。

例えば、「漁場予測AI」です。過去数十年の海水温、海流、プランクトン濃度、そして実際の漁獲データをAIに学習させることで、「明日の朝、どこに行けばカツオが獲れるか」をナビゲーションのように指示してくれます。これにより、燃料代と探索時間を大幅に削減できます。

また、「市場価格予測AI」も登場しています。豊洲市場などの過去の取引データや気象条件から、数ヶ月先の魚価を予測し、「今は獲らずに生け簀で太らせて、来月出荷した方が高く売れる」といった経営判断をサポートします。

市場規模と将来性

世界のスマート漁業市場は、年率10%以上のペースで成長しており、2030年には数兆円規模に達すると予測されています。特にアジア圏(中国、インドネシア、ベトナム)での導入が加速しています。
これまでは「獲る」ことが最優先でしたが、今後は「資源管理」がキーワードになります。IT技術を使って「いつ、どこで、誰が、何を、どれだけ獲ったか」を正確に記録することは、MSC認証などの国際的なエコラベル取得の必須条件となっており、輸出競争力を高めるためにも不可欠です。

技術的な詳細:水中のIoT

陸上とは異なり、水中では電波が届きにくいため、通信技術の革新が求められています。

  • 海中光無線通信: 音波よりも高速に大量のデータを送れる光通信の実用化が進んでいます。これにより、海中のドローンから高画質の4K映像をリアルタイムで送信し、網の破れや魚の状態を鮮明に確認できるようになります。
  • バイオロギング: 魚自体に小型センサーを取り付け、回遊ルートや習性を解明する技術も、漁場の特定に役立てられています。

課題とトラブル事例

導入には壁もあります。

  • 初期コストと維持費: 高性能なセンサーや通信機器は高価であり、個人経営の漁師には負担が重すぎることがあります。
  • デジタルリテラシー: 現場の漁師は高齢者が多く、スマホやタブレットの操作に不慣れなため、せっかくのシステムが使われないまま放置されるケースも散見されます。

関連リソース

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